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2006年7月10日 (月)

「こんにちはマドモアゼル」内藤ルネ著

_001  図書館で発見した不思議な本。1959年に出た本の復刻版で、ティーン向けファッション記事がでている。メンズ・レディースといったぐあいに分かれておらず、少年と少女のファッションが同列に、対のような形で扱われている。小物や雑貨、人形の作り方まで書いてある。海外の古典ロマンスを訳した短編小説も載っている。

作者の内藤ルネ(当時26才)が、文章も撮影もイラストもほとんど全部自分でやったというからすごい。そしてモデルの若い男が編集も兼ねているという。どうしてそうなったのか、人手がなかったのか資金がなかったのかはわからない(単に個人的に親しかったからかもしれない。べつにファッション記事を書くからおネエだと決め付けるわけじゃないんだけど)。

もちろん50年代のファッションだけあって、「何だこりゃあ!」という妙なのも多い。しかし、物も情報も乏しい中で、めいっぱい楽しもうというクリエイティヴなパワーがある。とにかく自分で作ること、アレンジすることを提案している。

たとえば、

欲しくてたまらなかつたけれどあまり高価なので買えない――といつたプリントをやつとホンの1mほどでも買つた時の嬉しさ!

 といって、花柄のちっちゃなプリント布地を、洋服と組み合わせていろんな使い方をした写真が出ている。こんなところは、ちょっと泣けてしまう(そんなに生地が不足していたのか……)。

そして感動したのは、オペラ・ピンク(濃いピンク)に関する記述。

 パリのデザイナー、スキャパレリイ女史が発見して、この色をショッキング・ピンクと呼んで愛していることは有名です。それまでには考えられなかった濃い目の鮮やかなこのピンクは、赤が持っていた絶対的な華やかさを上まわる魅力を持っていると云えます。

 そうなの、そうなのよ! 濃いピンクってホント素敵。この内藤ルネという人はきっと大物だ。「オペラ・ピンクは王女様の色」と賛美を惜しまない。

 というのは、私は濃淡を問わずピンク好きだが、ある時、妙な本を見つけた。(あんまり腹が立ったので題名は忘れたが)色彩心理学をうたい、「この色を好んで着る女はこういう性格だ」ということが書いてある。その中で、濃いピンクを愛する女の人格がこき下ろされていた。いったい何の恨みがあるんだ、というくらいひどい言われようだった。しかも同じピンクなのに、薄ピンク好きの女だけが聖母マリアのごとく持ち上げられていて、不公平きわまりない。

 昔なら「女は慎ましくあれ。派手な色を着るもんじゃない」と、うるさい道徳おじさんみたいのが言っていたのだろう。しかし今時そんなことを言っても笑われるだけだから、色彩心理学という形をかりて逆襲したのかもしれない。

 この色彩ファシズム本が出たのは、多分80年代か90年代。そう考えると、50年代に生きていたこの内藤ルネという人がどんなに進歩的なセンスの持ち主で、人間としても度量の広い人かよくわかる。

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