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2006年9月17日 (日)

黒い裏庭

Book12  家の本棚で発掘した本。「日本の民話」全12巻から成るらしいが、なぜかこの第10巻「残酷の悲劇」だけがひっそりと他の本の中に埋もれていた。

 昭和48年発刊で、おそらく私の誕生以前に親のどちらかが購入したもの。子供の存在を想定せずに買われたものだけに、おもしろい。読み出したら止まらない。私はなんとなく「日本の民話はつまらん」と思っていたが、どうやら「よい子の日本民話集」みたいなのしか読んだことがなかったらしい。(昔TVアニメで「日本昔話」をやっていたが、これまた子供心にはつまらなかった)。

これはとにかく、みもフタもないのが良い。とことん踏みつけにされた農奴たちの物語なだけに、いい領主とか、善良な殿様などは一人も登場しない。そして、想像を絶する飢えと貧しさの中で発生するブラックな笑い。

ここには日本の暗黒面が広がっている。

どれもおもしろいのだが、中でもちょっと異色のものを、あらすじだけ紹介すると、

(九州地方の話で)「しゃれこうべの歌」。

万三と千三という2人の男が、上方へ出稼ぎに行き、3年間あれこれ下働きを引き受けた。仕事は厳しく、千三は途中でいやになり、チンピラのようになってしまう。万三はコツコツ働き続け、小金がたまったので、故郷へ帰ろうとする。そして無一文の千三のために着物や家族への土産を買いそろえてやる。

2人で旅立ち、やがて山にさしかかって一休みした。千三はいきなり万三の首を切り落とし、彼の金をすべて奪って一人で実家に帰る。3年の間遊び暮らして金が尽きると、また出稼ぎに行こうとした。

前と同じ山道にさしかかった時、万三のどくろが現れた。千三は逃げたが、どくろが追ってきて「昔のことは水に流して、一緒に上方で商売しよう」と言う。そこで、どくろが歌い、千三が客を集めて金を取るという、見世物小屋のようなことをやって大儲けする。

これが評判になって、ついに殿様に招かれた。ところが、そのときに限ってどくろが歌わない。千三は「インチキ野郎」と罵られ、殿様に切り捨てられてしまう。そこでやっとどくろが口を開き、「自分の想いが叶った」と歌う。

この話は、色気ゼロにもかかわらず、なぜか「愛と性の残酷」の章に入れられている。

この本では民話を4種類に分けており、他には「貧しさの犠牲」「家を巡る悲劇」「権力の残酷」の章がある。

「貧しさの犠牲」には旅人を殺して食らう話や、赤ん坊を崖下に捨てる話が並ぶ。とりあえず食べ物に困っていないこの2人は、比較的恵まれた人種ということになってしまう。「権力の残酷」にしても、だまされたと言っていきなり斬りつけてくる殿様程度は、まだかわいい方である。

というわけで、他に行き場がないのでやむなく「愛と性の残酷」に収録されたのかもしれない。

万三の人間性は、ちょっと複雑で魅力的だ。マジメなだけのつまらない男かと思いきや、やくざ者になった千三と付き合い続けて裏切られる。どくろになった後は芸人として花開き、「たいへんうまく歌った」とある。

山道で千三に再会した時も、普通ならその場で頭突きでもして終わりだ(他の民話はそういう唐突なエンディングが多い)。ところがこの万三、決して自分では手を下さない。いったん喜ばせておいて突き落とすという、周到なテクニックも使う。なにか楽しんでいるようでさえある。

やはり「愛と性の残酷」なのか。万三……。

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