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2007年4月 2日 (月)

「完璧な赤」

私の赤い色の思い出、それは……

その昔、親戚のねえさん(今はおばさまになってしまったが、当時は若くて独身だった)が、家に遊びに来た。彼女はなぜか真紅の、シンプルで身体に添う形のワンピースを着ていた。しかし和風の地味な顔立ちのため、挑発的というよりも雛人形のように見えた。洋服を着ているにもかかわらず和服に見せてしまう人間というのもちょっとすごい。

 さてこのねえさんが何気なく居間の窓辺に立って喋っていると、母親が突然「隠れなさい!」と叫んだ。理由は、川向こうのアパートに住んでいる独身男が帰宅したが、なかなか家に入らずドアの前に突っ立ってこっちを見ていたから、というのである。たしかに赤は遠くからでも見えるが、今思うとけっこう距離があるので本当に見ていたかは疑問だ。そして、私は知っていた。ワンピースの赤さに動揺し、気圧されていたのは、向かいのアパートの男なんかではなく、実は母自身だということを……。

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「完璧な赤」は、赤い染料の歴史を書いた歴史ノンフィクション、というので買ってしまった(2000円もするのは、中世の絵画などをのせたカラーページがあるから仕方ないのか)。

 私は学生時代に絵画史をかじったので、鮮やかな赤の絵具が貴重品だったことは知っていた。ただ、赤の染料が貴重だったことはよく知らなかった。(そうすると、古代や中世を舞台にしたファンタジー小説の中で、特に金持ちでもない人物が赤を着ているのはおかしい!?) 今の時代、もしも国王や大統領が真っ赤なスーツを着てTVに映っていたら、何事かと思う。しかし、赤が地位や権力の象徴で、身分ある人が威厳を示そうとして大真面目に赤を着ていた時代があったのだ。

 そして著者名がエイミー・B・グリーンフィールド(Greenfield)といって、なぜか赤の補色である緑を意味するところがオツだ。

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コメント

色は不思議だと思う。それはこんな時だ。私は時折深夜、ふと目が覚めてしまう。そこから起き上がれず、じりじりと闇の中で目が慣れるまでベッドに縛り付けられたように動けないことがある。ただそこに横たわるのは、恐怖という布に包まれ固まった私だ。(たぶん死に近い何もない世界を考えて、ぞっとするんだと思う)そんな時、泣きたくなるが、明かりをつけ眩しさに目が慣れると、微かに色のある世界がゆっくり広がり、さっきの恐怖が消え強張った体に、ゆるやかに血を巡らせ始める。色には、光がある。私は心の中の闇の部分をこよなく愛していますが、色のない世界は、別物でただの恐怖でしかない。
 赤の鮮やかさは、見るものを圧倒し、それを纏うものに力を与える。勇気を起こしたい時、元気になりたい時に赤い口紅や赤い小物、服を着ます。小宮さんの文章を読んで、ふと思いついたことです。半分寝ぼけているので文章が変でないことを祈る。(苦笑)
 それにしても、小宮さんの話は今回の赤色に関わる話や紫のきみにしても、やっぱり一つのストーリーを連想させるというか、お話の入り口を垣間見せますね。どれも面白い。夜中に起きると、前文のような小心的な気持ちになるので、枕もとだけ照らす明かりをつけて本を読んだり、好きな音楽を眠くなるまで聴いたり、今日のように小宮さんのブログを覗いたりするんだけど。ふとこのもてあます恐怖からストーリーが生まれそうだなと今思いました。今から書いてみようかな。まだ眠れそうにありません(苦笑)ふふっ、では、また素敵な小宮さんのお話を読みにきますね。

投稿: 未知.F | 2007年4月 5日 (木) 03時18分

小宮さんの赤にまつわる思い出、スリリングなので、ハラハラしながら拝見しました。赤という色に、そんな魔力があるとは、不覚にも今まで気づきませんでした。私は女性ですが、赤は苦手で、殆ど身に着けません。理由は、単純に自分らしくない色だと思うからなのですが、それは、自ら、その赤の魔力を放棄してしまっていることになるんですね(笑)。

赤が地位や権力の象徴だというお話も、ナポレオンの戴冠式の時の赤の衣装や、昔のフランスの王や王妃が正装している時に身に着けている赤いマント等を思い出し、納得させられました。「完璧な赤」、面白そうな本ですね。

関係の無い話になりますが、小宮さんはピアス派ですか、それともイヤリング派ですか?

投稿: Crinum asiaticum | 2007年4月 6日 (金) 18時26分

未知様
色のない世界と死の世界の結びつきというのはなんだか哲学的ですね。
私も夢うつつの時に妙な気分になることがあって、現実にはまったく危険のないはずのものが、深刻な恐ろしさをもって迫ってくることがある。でも目を覚ましたとたんそれは消えて、またいつもの合理的な自分に戻ってしまう……。
未知さんは目を覚ましてもしばらくその夢みたいな感覚を留めておけるんですね。そして人の持っている恐怖は、共通項もありながら、やはり個性もあって様々なのだなあと思います。他人には理解不能かもしれない恐怖の世界を表現することは、難しいかもしれないけどきっとおもしろいでしょうね。

投稿: 小宮 | 2007年4月 9日 (月) 01時22分

Crinum asiaticum 様
おひさしぶりです^^
コメントありがとうございます。
そうです、今は赤いランドセルなんかは女の子のものですが、昔は男性の色だったのですね。たしかに赤は強い色なので、人によってはどうも苦手という方もいらっしゃると思います。
私の場合、どうも着心地悪く感じるのは茶やベージュです。灰色は寂しくなります。

ちなみに小宮は耳をこよなく愛する女なのでピアスホールがありません。

投稿: 小宮 | 2007年4月 9日 (月) 01時56分

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