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2007年10月15日 (月)

アリたちの末期病棟

007_2  ゴキブリに困ってコンバットを置いたら、翌日からぱったりと姿を消した。念のためベッドの下にも一つ置いておいたら、床下に潜んでいた茶色で大型の家アリも死に始めた。

 アリは仲間が病気になると巣の外に運び出して放置していく習性がある。決して遺体を搬出するのではない。仲間がまだ生きているうちに、もだえ苦しんでいるのを強制連行して、できるだけ巣から遠ざけて捨てていく。伝染を防ぐための本能らしい。治療とか看病とかいう概念がないのでドライである。

捨てる場所としては、窓際など明るい場所が人気だ。クロゼットの縁など、ちょっとした段差の周辺も好まれる。

一概に仲間を捨てるといっても、何気なく見ていると多様性がある。

「よいしょ、よいしょ。ま、このへんでいいか」という感じで置き去りにするのは合理的な多数派。

何割かはハイテンションな「死のダイヴ」の引率者。とどめをさしてやろうとでもいうのか、病アリをかついだまま窓ガラスや壁を垂直に駆け上がり、わざわざ高いところから落下させる。

それより少数だが、放浪派。ピクピクしている病アリを引きずりまわして永遠にさまよい歩く。置いたかと思うとまた引き返して運び、置いたかと思えばまた運ぶ。あんまりいつまでもウロウロしているから、こっちもいい加減うんざりして行方を追うのをやめる。いったい別れを惜しんで葛藤しているのか、それともよほど優柔不断なのだろうか。

一組だけだが、ロミオとジュリエット風のコンビもいた。運んできたアリ自身も途中で力尽きてヨロヨロとなり、そのまま仲間に折り重なるようにして最期を迎えた。

意外に多いのが、「てやんでい、死に場所くらい自分で決めらあ」とでも言いたげな孤高のアリ。単独で巣から出てきて縦横無尽に駆け回ったあげくコロッと倒れる。

 アリはトンネルを掘るのが仕事なんだから、たのむから巣の一角をちょっと増築して、ホスピスや霊安室や墓地を作ってもらえないものかと思う。確かに巣の外に放り出せば簡単だが、彼らにとっての「巣の外」とは、すなわち人間様の部屋だ。部屋の床に累々と、アリの死骸が散らばって困る。片付けても片付けても数時間後にはまた新たな急患が運び出される。

 ゴキブリは瀕死の仲間を巣の外に運び出さない。死骸が目に付く場所にないということは、みなさん隠れ家でお亡くなりになっているのだろうか。コンバットの説明書きによると、ゴキブリは仲間の糞を食べる習性があるという。ゴキブリたちの付き合いは良くも悪くもディープだ。そこへいくとアリの方がはるかに冷淡で利口な感じがする。

 利口と言えば、アリの死骸とともに、細かくちぎった黄色いスポンジのカスのようなものが床に落ちているようになった。最初は何なのかわからなかったが、これがどうもコンバットの中に入っている毒餌のカケラのようなのだ。アリがちぎって巣に運び込んだが、何かおかしいと気付いてまた運び出し、人間の部屋の床に捨てていくのではないかと思う。

 うちのインコのそらまめには床をつつきまわるくせがあるので、コンバットのカケラを間違って口に入れないか心配で困る。

 家アリの存在まで想定していないのか、とにかく思わぬ弊害の多かったコンバット。一週間ばかりで病アリの搬出数も落ち着いてきたからいいけれど……。ひょんなことから見てしまった末期アリの世界。

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