« 一少女より「幸福の王子」に寄せて | トップページ | 「ブギーマン」 »

2007年12月 3日 (月)

「誘惑のエメラルド」

Photo  山藍紫姫子は昔好きだったが、ある時から新刊が出なくなったので、長い間忘れていた。でも最近、図書館でこの「誘惑のエメラルド」(ただしこれも98年くらいに出たもの)を見つけたので、久々に読んだ。

このストーリーは、

舞台はどこの国だかよくわからないが、中世ヨーロッパ。貧しい男爵家の三男が奴隷として競りにかけられるところから始まる。このへんでもう、「ほら、きたぞきたぞ」と笑い転げてしまう。本当は笑い事ではないのだが、これは歴史の悲惨な面を描く深刻小説ではない。耽美モノとしては、ここは笑う場面なのだ。

この貧しい三男の、かわいそうなミゲル少年は海賊に買われたが、翌日奇跡的に救出される。次に親切な将校に拾われ、将校の友達の公爵家に連れて行かれる。この公爵の城に、エメロードという伯爵が客として滞在している。彼がミゲルを気に入って、専属の召使にする。

エメロード伯爵はその名の通り美しいエメラルド色の目をした美青年。しかしちょっと高飛車な感じで、何を考えているのかわからない。また、たいへん性格が悪くて「毎日、日にちの数だけ奴隷を鞭打つ」というわけのわからないルールを実行する。つまり月初めは1日1回だが、30日になると30回ぶたれる。そんな彼が実は敵の回し者で、城主である公爵を殺そうとしていることがわかってくる。

そしてこのエメロード伯爵、企みがバレて尋問されたあげく、とうとう地下の拷問部屋へ……(爆笑)

           *

「あやしい、あやしいと思っていたヤツがやっぱり犯人だった」というのは怪奇小説によくある手法だ。ミステリーのような二転三転を望む人にはこの快感がわからないらしいので、ちょっと説明すると、

 「あいつは何かおかしい」と思っていた人物が「やっぱりあやしかった」と確定する時のカタルシスが醍醐味なのだ。現実には「あいつは何かおかしい」と思っていても、そう簡単に罪が暴かれるわけでもないし、罰が下されるわけでもない。ところが、たとえばこの小説の中では、陰謀はいっそ軽快なほどにパッパと明るみに出るし、どんどん仕返しや下克上が行われてゆく。この、あっという間に覆されてしまう常識やルール、瞬時に立場が逆転する不確かさが魅力なのだ。

 もしも軽快な逆転、混沌、不確実性などというのが不愉快に感じられ、「そんなバカなことあるもんか。世の中そう簡単に変わらないよ」と言いたくなるのなら……あなたは今現在あま~い汁を吸っている最中なのかもしれない。

 しかし最近は、トップにいた者があっという間に蹴落とされたり、悪事が明るみに出ることが多くなったらしい。現実が怪奇の世界に追いついてきたのだろうか。

 

にほんブログ村 本ブログへ

|

« 一少女より「幸福の王子」に寄せて | トップページ | 「ブギーマン」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/28889/9225212

この記事へのトラックバック一覧です: 「誘惑のエメラルド」:

« 一少女より「幸福の王子」に寄せて | トップページ | 「ブギーマン」 »