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2008年3月24日 (月)

About Making

20080302_2

←番長沙蓮

 

 来週印刷が完了する予定の個人誌は、このブログでも出品させていただきます。

※あとがきを書いている時間がなく、本文だけ印刷に出してしまった。なので以下に製作に関するエッセイを記載させていただきます。

そうさく畑62 4月6日のイベントそうさく畑は、スペース4丁目1番地、サークル「LYCANTHROPE」で出店します。会場アクセス

○挑戦

以前、長編ファンタジーを書く男女3人を知っていた。この3人には共通点があった。それぞれ作風は違うものの、贖罪とか宿業とかいうようなことを好んでテーマにするのである。この点は好きになれなかったが、3人はまた、私をはるかにしのぐ長所も持ち合わせていた。彼らは実に見事なプロットを作るのだ。そして、建築図面に従ってビルでも建てるように、迷うことなく、最初から最後まで一気に何百枚もの原稿を書き上げる。これは私にはとうてい真似できないことだった。

 あるとき飲み会で、会計士だという人と隣り合わせた。彼は数字を使ったゲームを紙切れに書いた。簡単なものだったのかもしれないが、私の数学の成績は惨憺たるものだったし、球技やトランプでも、少しでも戦術を要することは必ず負ける。いやいやながら付き合っていると「俺が勝ったらホテルへ行ってもらう」と言う。私は即座にゲームに使っていた紙切れを丸めてコップに入れ、相手の頭の毛をつかんだ(薄くなりかけたネコっ毛が彼の弱点だと踏んだからだ)。ゲームに負けることはわかりきっていたが、瞬発力と残忍さにかけては私の方が上だった。

 それと同じように、私の小説にも何らかの武器、長所があると信じている。会計士たちは私の倍(ことによったらそれ以上)の月給を稼ぐ。でも私は、彼らには一生かかっても作れないものを作ってやるのだと思っている。

しかしながら新人賞を取った小説にたいして選者たちが口癖のように言う「計算しつくされたストーリー」「巧妙きわまる人物配置」などという、芸術家というよりはそれこそ会計士や棋士にでも寄せられるような賞賛の言葉を見るたび、「どうせ私は」と開き直りに近い気持ちになる。「こんな私には書く資格はないんでしょうか?」という疑問を小説技法の先生にぶつけたこともある。先生はさりげなくごまかしてしまわれた。だから自分で考えるしかない。そして長編は、とにかく書いて完成させるごとに、ひとつひとつ何かがわかる。ただし気が遠くなる。

○恋について

 あらすじをざっと話しただけで「そんなこと書いて自分で恥ずかしくないのか」と聞かれたことがある。このようにおっしゃるのはアンジェラ・カーターも倉橋由美子も読んだことがない人か、もしくはサービスという概念がないのだろう。とはいえ性描写は流血シーンと同じく、人によってはサービスどころか敬遠される原因になる。好き嫌いはどうしようもないから関知しない。しかしもし、迫力が足りない、あるいは自己満足だ、と思われてしまうとしたら、それは私の力不足のせいに違いない。

 両性具有モノは少女小説家として一度は書いてみたかった。そして自分なりの解釈で表現できたと思う。たとえば一口に「ドラゴン」といっても、ウロコは何色なのか、寿命はどれくらいか、性格は凶暴なのか賢いのか、火は吹くのか、飛行できるか否か、爬虫類の生態をふまえたリアルなものからまったく荒唐無稽なものまで、作家によって十人十色のドラゴンが出来上がる。それと同じで、これは私にしか書けないものだったと確信している。タニス・リーの「死の王」には遠く及ばない。でもヴァージニア・ウルフの「オーランドー」に対して私が感じた不満だけは、絶対に読者に与えまいと心に誓った(その不満とは、オーランドーの精神性ばかりを重視して生理機能をまるごと無視したことだ)。

 

私は、スティーヴン・ハンターがゼロ・セクシュアルと表現したところの、透明で植物的な感じの「中性的な人物」は書きたくなかった。むしろなんとしても避けたかった。私の願いは、精神の解放でもなく、哲学的な真理に到達することでもない。つまり、宇宙人や精霊や仙人を書くことではない。非常に女らしいと同時に非常に男らしい、いわば恋と人生における究極のスペシャリストを創造すること――それに尽きる。残念ながら成功したという確信はない。道程半ばのような気もする。

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