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2008年6月 9日 (月)

アリスのこと②

 今でもロリータファッションのモチーフとしてよく使われるアリス……について考える(といってもロリータさんたちを惹き付ける理由は、けっきょく私にはよくわからない。私はアリス風の服を着たいと思ったことがないので)

Imgp4827 最近見つけた古い本。「アリス幻想」高橋康也編 すばる書房

寺山修司の短編がのっていた。とくに探しているわけでもないのに、興味のある本をあさっているとたびたび出会う寺山修司。神出鬼没なおじさん。

アリスの本の挿絵はジョン・テニエルが描いたものが有名なのだが、それ以外の画家たちが描いたアリスの絵がいろいろ出ていておもしろかった。アーサー・ラッカムの挿絵は本家テニエルのものより断然美しいと思う。ただ出版された当時批判されて本人がやる気をなくし、二作目の「鏡の国」はまたテニエルに落ち着いたという逸話があるらしい。

↑この「アリス幻想」の表紙に使われているのはラッカム。ごらんのとおりラッカム画のアリスは、かの有名なエプロンドレスを着ていない。スカートもパニエでふくらませていない。もしも挿絵画家がテニエルでなかったら、アリスファッションも存在しなかったことになる(それでもロリータファッションは存在したはずだ。ただそれがアリスと結合しなかっただけで)。

Imgp4825 私は小学生のとき、11か12歳頃に「不思議の国のアリス」を読んだが、最初は「わけわからん」という希薄な印象しかなかった。続いて「鏡の国のアリス」に手を出すと、こちらは格段に読みやすかった記憶があり、あっという間にアリスの虜になってしまった。

「不思議の国」の方も、別の訳者の、詳しい注釈つきものを買ってもらって読み直した(写真・「東京図書」発行)ら、なかなか古風で味わい深いものだった。(そうなると最初の本は訳が悪いから意味不明だったのか、とも思うが、実際原作の方も「鏡の国」の方がわかりやすい構造を持っているらしい。「不思議の国」を子供向けの本として訳すのはとても難しいと思う)。

あの頃、アリスの中核とされている風刺もチェスもわからないで何がおもしろかったかといえば、「鏡を通り抜けて別世界へ行く」というアイディアや、女王やユニコーンなどのキャラクターの強烈さだった。主人公のアリスにはそれほど魅力を感じなかった。私が深く感じ入ったのは、常識人のアリスを困らせるモンスターたちの存在と、彼らが決して優等生的理論で断罪されることなく、堂々とそれぞれの変人生活を営んでいたことだ。

あの時の私にとって「変でもいいんだ」という悪い教科書だったように思う。

知っておかなければならなかったのは、主人公のアリスちゃんが並外れていい子だということだ。不思議の国のイカれた住人たちにたえず驚かされ、時にはイライラしながらも、常に公平で、率直で、きちんと対話しようとする。それなりに付き合ってやっているのである。それに、モンスターたちは不思議の国だからこそ生存可能なのであって、地上世界では無力のような感がある。それでも、不思議の国が、たとえ本の中であるにせよ、存在することは救いなのだ。

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