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2008年6月 2日 (月)

アリスのこと

Imgp4824  こんなの出てきたのです。これは私にとって「不思議の国のアリス」本作以上に楽しかった本。

「アリスの国の不思議なお料理」ジョン・フィッシャー作 開高道子訳 文化局出版(昭和53年に初版が出て、今でも再版されたものがあるらしい)

アリスワールドにちなんだ料理の作り方がいろいろ紹介されている。主に英国式「お茶の時間」のための食べ物で、夕飯のおかずという感じではないが単なるお茶菓子よりは重い。

この本を手に入れた当時中学生だったので、比較的簡単に作れそうなものをいくつか作ってみたが、おもしろいだけじゃなく本当においしいのだ。「ハの字ハムサンド」「お食べなさいケーキ」はお客様にも好評だったし、「二刀流きのこ」「鏡の国のミルク」など、どれも生まれてはじめての、忘れられない味だった。

ただし本場西洋料理のやり方なんぞに馴染みのない家族からは、(バター等の素材の使い方が)贅沢すぎる、と繰り返し釘を刺された。我が家は外食一家で、外で食べる分にはずいぶん気前良かったものだが、いざ家の台所で大量の生クリームやバターが使われるのを見るとビックリ仰天するのである。

このように、子供でも作れるレシピもあるのだが、多くは手間隙がかかる上に、材料が手に入れにくかったり、聞いたこともないようなものだったりする。たとえば羊の脚なんか、そこらの店にはない。だから、今に至るまで一度も手をつけていないレシピもたくさんある。オーブントースターでプティングを作ろうとして失敗した記憶もある。(のちに、本にある「オーブン」は自分の家にある「オーブントースター」とは違うことに気付いた。「カマド」とでも訳してくれたほうがありがたかった。しかし「卵のココット・アリス風」は強引にオーブントースターで作り、時間を長めにして、なぜか成功した)。

 そういえばイギリスの食事はまずいと言うが、この本の著者はオックスフォードの卒業生だという。だからおいしいイギリス料理も、たぶんあるのだ。とくにこの本では、ルイス・キャロルの生きていた時代を髣髴とさせる、優雅でのんびりとした世界を垣間見ることができる。材料のことはひとまずおいておくとしても、この時間的贅沢さはただ事ではない。とくにすごかったのは「おしゃれゆで卵」というレシピで、これもまたおいしいのだが、二度と作らなかった。いったいどうしたら、たかが模様入りのゆで卵を作るためにこれだけの時間と情熱をかけられるのだろうか? ここまでくると、料理なのか文学なのか、はたまた芸術なのか謎である。

 ただし著者の解説によると「アリス」の作者ルイス・キャロルの時代にはビクトリア式の厳格な食事作法を強要された上、3人の兄弟と7人の姉妹にはさまれて苦労したらしいから「おまえこそが贅沢だ」と言うかもしれない。この解説にはキャロルの食へのこだわりについて書かれているのだが、たしかにアリスの中の「セイウチと大工と牡蠣の詩」なんかは、読んでいてぎょっとした記憶がある。どうして裕福なはずの坊っちゃんがこういうことを考えつくんだ、というくらいせちがらくてダークな内容なのだ(そしてこの本にもやっぱり「牡蠣の大宴会」というレシピがある。この詩を見たあとでこれを食べるのか、というシュールさだ

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