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2008年7月 7日 (月)

ちょっとディープな人造人間「メイキング・ラブ」

51ddb6yvmal_sl500_aa240_1  何らかの方法で自分の欲しい人間を造りだす(アンドロイドなり、宇宙人に依頼するなり)というテーマは大好き。これは魅力的で、同時に恐ろしい主題だ。だから、私も悲劇やホラー仕立ての結末がしっくりくると思っている。ただしマンガファンの人には別の意見があるだろうけど。

 「メイキング・ラブ」メラニー・テム&ナンシー・ホールダー著 山田蘭訳 創元推理文庫

 主人公は国語教師シャーロット。厳格だった母を敬愛し、「つまらん男にひっかかるくらいなら一人で生きろ」という教えを守り続けているうち、40の大台にのってしまった。一方、彼女の弟は精神分裂病ぎみの芸術家。ある日とつぜん「人間を造る方法を発見した」と言う。そして、シャーロットの誕生日プレゼントに、理想の男を造ってくれる。

 人間製造法があまりにもいい加減なので笑ってしまった。スタニスワフ・レムの「惑星ソラリス」も同じくらい変な話なのだが、科学的なコケオドシとウンチクにかけては断然うまい。ただ、心理ドラマやスリリングなロマンスという点では、私は「ソラリス」にはぜんぜん満足できない。全体的に「でくのぼうですみません」という感じの話なので仕方ないのだが。「メイキング・ラブ」はそれと逆で、SFやオカルトとしてのマニアックな詳細はあまり期待しないほうがいいけれども、他の点では大満足させてくれる。

 シャーロットは「こんな先生いたらイヤだなあ」という、堅物の腹立たしい女だ。自分が高校の生徒になった気分で、ムカつく先生が愛欲におぼれてヘナヘナになる姿をのぞき見たような、「ざまあみろ」という一種のすがすがしさが味わえる。

 彼女は同時に、しょうもないくらい純真な人である。どんなふうに愛されたいかについては事細かな理想があるにもかかわらず、彼の経済力については何の注文もつけていない。私だったら「流れた血がルビィに、涙はダイアモンドになり、しゃべるたびに口から金貨がこぼれる」という属性を付け加えるし、「半年ごとに脱皮して外見が変わる」とか「超能力で空を飛べる」とかやりたくなってしまうのだが。

 ところで、人間製造法を発見した弟の方は、自分のために子供の人造人間をつくる。そしてガールフレンドのスーザンも巻き込み、孤児を引き取ったかのように見せかけて、奇妙な家族をつくりあげてゆく。

しかし彼は、自分が造った子供がすぐ気に入らなくなったり、飽きたりするようだ。そして子供を造っては消し、造っては消すといった調子で、とっかえひっかえするようになる。その部分はなんともいえず残酷だ。(「子供を造る」という作業は、小説を書くことに似ている。そしてその子供は、切ないことに、時に出来損ないである)。彼はしまいには反旗を翻した子供たちから報復されて自滅してしまう。

シャーロットの上司である女校長ダイアンの、「愛って骨の折れるものよ」という言葉がディープだ。

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