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2008年10月27日 (月)

フラクタルの女神

41vfrwkemcl_sl500_aa240_1  これは、はっきり言ってあんまりおもしろくないのに、あまりにマニュアル的なところが不思議なので、たびたび読み返してしまう。まるで教科書通りにキッチリ書いたみたいな(SFの教科書というものがあったとしてだが)感じなのだ。空想科学あり、恋あり、クライマックスにはバイオレンスアクションあり、スラムにギャングにドラッグに殺人……と見事にお約束が盛り込まれている。また各章が5~10ページ前後と短く区切られていて、いわば建物の鉄骨をそのまま見せているような、無粋だが興味深い構造をなしている。

 ところで、女性が日常会話の中で語尾につける「~だわ」「~よ」がすたれ、「~だよ」「~だね」にとってかわって久しい。日本の作家や訳者はおおむねこの変化を取り入れている。しかしこの本では、女性たちのセリフがことごとく「~だわ」調で訳されているため、2005年出版にもかかわらず、なんともいえず古風な印象を与える。学者のシドはまだしも、近未来のデトロイトで育ったティーンエイジャーであるはずのマグノリアや、娼婦のローズまでがお上品に「~だわ」と言っているのにはなんだか調子が狂う。

ちなみに、私も普段「~だわ」と言うことがある。本で見ただけではたぶん使わなかったと思うが、実際に耳で聞いたことがあるからだ。しかしこの喋り方は女性から学習したものではなく(うちでは祖母ですら使っていない)、オネエキャラのタレントからおぼえたものだ。また、オネエではないのだが、同世代の男性の中にも「~だわ」「~なのよ」と頻繁に口にする人たちがいた(たとえば「今日バイト休むわ」「あいつバカなのよ」「それ好きよ」という言い方をする。オネエとは若干発音が異なる。人によってはむしろ不良っぽく、実にセクシーに発音するので、しばらく一緒にいると耳に残ってクセになる)。いずれにせよ私にとって「だわ調」は男から習得したものということになる。逆輸入とでもいったらいいのだろうか。リアルな女らしさとは結びつかない一種の虚構的なものでもある。

 それはさておき、キャラクターの場合、少女や若い子のセリフは「~だよ」とした方が絶対自然だと思う。ただ、翻訳者にはいまだに「だわ」好きな人がけっこういるらしいのだが、どうしてなんだろう。

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