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2010年12月26日 (日)

ほんとのところ、サイコパスって?

031_2 「自分は何でも前向きに考える」「思い立ったらすぐ行動する」と自慢する人がいたら、「犯罪者もそういうこと言うらしいですよ」と言ってみることにしている。

ちなみにこれは本当のことだ(私は犯罪告白モノや犯罪ドキュメンタリー本が好きである)。

「どうして強盗なんかやったのだ、いくら金に困ったと言っても、まだ他に方法があったのではないか」と聞かれて、「自分は思いついたらすぐ行動に移さないと気が済まない性格なので」と答える犯人たち。

歴史に名を残す大泥棒いわく「興味のあるものしか目に入らない」。テロリストいわく「私はアイディアが浮かんだらすぐに具体的な計画を立て、どんな障害があっても実行するまで絶対にあきらめない」。

「非難なんか乗り越えて、必ず幸せになってみせる。私はこれからも自信を持って明るく前向きに生きるつもりだ」と、これが拘留中の殺人犯の手記だったりする。

 つまり私は、ポジティヴ・シンキングとやらそれ自体が賞賛すべきこととは思わない。善良と明るさはイコールで結べない。矜持、楽観主義、優れた集中力や実行力は、ビジネスだけでなく罪や悪徳、おそらく戦争においても加速力だ。廃れた道徳律の上にこれらの特長だけ祭り上げれば、悪もまた栄えるだろう。

では、真に両者を分かつものとは?

 最近こんなの見つけた。

511g1vj713l_bo2204203200_pisitbstic 「良心をもたない人たち ~25人に1人という恐怖~」マーサ・スタウト著 木村博江訳 草思社

個人的には原題の「The Sociopath Next Door」が好き。

小説や映画でとってもおなじみ、邪悪で冷血なサイコパス(もしくはソシオパス、反社会性人格障害)。私が子供の頃、少年マンガの敵キャラにはこの手合いが多く、25人に1人どころか4人に1人くらいの人口比になっていた気がする。よく「サイコキラー」「サイコ野郎」などというが、実際サイコパスの定義とは何なのか、その実態は……という疑問にわかりやすく答えてくれる。

 この本の良さは、下手に専門化されていなくて、視野が広いことだ。著者は現場経験の長いセラピストらしいが、精神医学だけでなく、生物学、社会学、遺伝子、有名なミルグラムの実験や、脳神経の比較(言葉に対する情緒反応を見るという検査はなんだか、P・K・ディックのSFの、アンドロイド発見器みたいだ)にも言及している。だから「ちょっと教授、あんたデズモンド・モリス読んでないわけ!?」「こういう研究もあるはずなんだけど、完璧無視しちゃってない?」というストレスがたまらなくてよい。

 犯罪者の多くは貧困や家庭の影響によるもので、最初から犯罪者に生まれてくるわけではない。しかし中には、どうにもルーツを探ることができない、善良な中流家庭から唐突に出現したとしか思えない凶悪人物がいることも、やはり事実のようだ。

現実には、サイコパスが連続殺人犯や独裁者になるとは限らない。そうなるのは、良心がないというサイコパスの特徴に、暴力や流血を好む傾向が加わった時だけだそうだ。この本には、不正行為をしつつも成功している実業家、売人兼業セクハラ高校長、育児放棄のジゴロ男など、より身近な例が出ている。

ところで著者の考えでは、良心とはすなわち愛であり、揺るぎなく人の感情に根付いたもの、またその基盤はかなり生得的なものでもあるらしいのだ。これはやや意外だった。

私はやさしさとは自然発生的な感情というより、教養であり、礼儀作法、最終的にはその人の美学や思想だと考えている。それを宗教から借りてくるのか、一族や師の規範にならうか、独学するかといった違いがあるだけで、ようは学問のようなものとみなしている

(そういうわけだから、「僕は単純なので」とか「オレは何も考えてない」とか、あたかも純真さの証のように言う人が不可解だ。というのは、人間は何も考えなければ自動的に自分の利益になることしかしないと思っているからで、単純な人といったらすなわち狡猾で自己中心的な人、ということに私の中ではなっているからだ。「無学でも愛情深い人はいるではないか」と言われても、その人物は少なくとも関係性という面では無知ではなかったというだけの話で、親切=鍛えられたセンス、愛=知であるという私の考えと矛盾はしない)

しかしこの著者、言い換えれば大部分の人間には普遍的な良心なるものがある、と信じているわけだ。長年の経験と研究からその結論に達したのか、それとも最初からそれが職業上の信念だったのかは不明だが、そこが持ち味と思う。

ちなみに、一連の資本主義向け発想(ポジティヴ・シンキング含む)はもともとアメリカから日本に輸入されたものだが、この本の中では「自分本位の文化」と呼ばれ、サイコパスを生み出す土壌であると指摘されている。

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コメント

色々、考えさせられました(^。^;)
難しいですよねぇ。世の中、ポジティブ&アグレッシブがもてはやされる中で、それらは悪人に取っても素晴らしい言葉に成りうるんですね・・・。

投稿: そばの華 | 2011年3月 3日 (木) 00時07分

そばの華 様

ご訪問ありがとうございます(^-^)
そうですね。難しいですね。
でもやはり、いつもポジティヴ&アグレッシブで良心を欠くよりは、
多少効率は悪くても情緒豊かで
罪を犯した時には立ち止まり、深く反省できることの方が
人の資質として価値があるのだろうと思います。

投稿: 小宮七斗 | 2011年3月 8日 (火) 22時31分

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